情報の値段

ひじき

最近のトレンドは、情報自体でお金を稼ぐのではなく(情報を自分のものとして独占することによって)、情報をどういう風に使うかというところでお金を取る。結構大きなパラダイムの変化があるらしい。というか多分実際にあるのだろう。はてなにしてもそんなモデルを基に作っている。人に質問をするためにお金を払わせて、その人が物を調べる場を作ることでお金を稼ぐ、と。

背景はいろいろあるのだと思うけれど、一つには情報っていうものがあまりにも増えすぎて、金銭的価値がどんどん減っているという見方も出来るのかもしれない。第一次世界大戦は科学者の戦争だった(化学爆弾、他の化学兵器)。二次大戦は物理学者の戦争だった(原子爆弾)。そして三次大戦は数学者の戦争になるだろう(情報戦争)。という文章を、この前読み始めた暗号の本(the code book)で読んだ。情報をもっていることは今後ますますその価値を高くする、だから数学者は必死に暗号を書いてそれを隠す。

この二つの見方は対立しているように見える。情報は、高くなったのか、安くなったのか。たとえば音楽ではどうだろう。CDの値段はここ数年そんなに変わってないと思う。他の多くのものに比べれば、変わっていない。高校のころに買っていたのと、今かったのとで、べつにそんなに安くなったな、っていう感覚はない。それに対して高校のころはありえなかったCDがコピーできるようになって、CDRというものが出たけれど、これはここ数年で値段的には地に落ちた。この二つから情報の値段がどのように変わったのか、ということを探り出すのは難しい。CDRのブランクCDと音楽CDに使われている記録技術は大きく異なるものだし。でもこういうことも考えられる。CDRを作る技術には、もちろん登場したてのころはものすごく価値があった。皆が知りたがったし、皆が改良したがった。そういう立場にあるものだから、CDRはすごく高かったけれど、今となっては周知の事実となって、それに対する情報代、というのはほとんどない。プラスチックと電気代の値段に近くなっているわけだ。

それに対して音楽は毎年新しいものがでてくる。聞いていると、こんなの五年前もあったよな、と思うものもあるけれど、やっぱり過去に存在しなかったという意味では新しいといえば新しい。だから値段の変化は「新しい音楽」というものに対する一般的な価値を反映することになる。そういう意味では音楽の価値はそんなに変わっていないということも出来るのかもしれない。

けれどもその背景にはCDRでのコピー、mp3でのコピー、p2pでの交換などなどの登場でどんどん音楽がただで手に入るようになっている。また一方では音楽のネット販売が進み、一曲いくら、見たいな信じられないやり方で音楽が売れれていたりもする。バナナじゃあるまいし、一曲いくら、なんてあんまりだとも思うけれど、そういうのがうけているらしい。音楽は安くなったのだろうか?ただなのだろうか?それとも情報自体の価値は変わってないのだろうか。もちろんそんな質問に簡単に答えは出ないけれど。

でも確実にいえるのは、昔よりも今のほうが情報が圧倒的に多い、っていうことだろう。自分が子供から大人に成長したから、というのもあるのかもしれないけれど、それだけでは説明のつかない急激な変化が起こっているのは明らかだ。8年前はインターネットなんてほとんどなかった。14.4kbsのモデムでニフティーサーブに接続するようなことがまだ当然のようにあった。それが今は月3000円払えば情報があほみたいに出てくる線がやってきて、はじめたら文字通り情報に溺れるしかない。最近RSSリーダーでニュースを読み始めたけれど、二日も見ないと500件くらいたまってる。もうほとんど読む気がしなくてランダムに目にとまったものを片っ端から読んで気がつくと二時間三時間に渡って膨大な情報摂取をしている。情報の摂取のし過ぎでせわしなく常にいろんなことを考えている。落ち着かなくなってブログを書く、また情報が増える。誰が読むのかわからないし、誰も読まないのかもしれない。けれどもいずれにしてもお金はかからない。というのは少し嘘だ。インターネットをやっていればいたるところに広告だらけだ、これをクリックして買い物をはじめなくても、こっちが見てるだけで向こうには利益が行くのと同じことだ。だからブログを書くにしても、読むにしても、気がつかないうちに結構お金を払っているのだろう。

ここで戻ってきた。書くほうも、読むほうも、同じだけお金を払っている。それも今までとは違うやり方で。お金を払ってニュースを読むのではなく、ニュースを読んでお金を払ってるようなもの。変化は大きいけど帳尻は合ってるみたいだ。グーグルなんてそれで大繁盛してるし。たとえばヤフーがあれだけ頑張ってブロードバンド会員を増やした背景にもこういう考え方があるんだろう。情報を提供することでお金を得るのではなくて、情報を扱うシステムでお金を取る、と。

ところで音楽の値段の話しには個人的に興味がある。実際相対的にどれくらいの変化が起こってるんだろう。卵いっこと比べてどれくらい変わってるんだろう。牛丼何杯分なんだろう。その前のレコードの時代はどうだったんだろう。今のネットミュージックは?ちょっと調べてみる価値がありそうだ。はてなのポイントでも買ってみようか。